認知症初期集中支援チーム 活動開始!鶴川サナトリウム病院

認知症治療を主体とした病院
昭和48年に開設した鶴川サナトリウム病院は、一般内科および老年内科と認知症の治療を主体とした精神科を併設する病院で、病床数は587床(一般81床、療養127床、精神379床)。内科と精神科の密なる連携を保ち、最新の医療技術を提供しています。
当院は国のオレンジプランに沿った「認知症初期集中支援チーム」活動に力を入れており、認知症の早期発見、早期治療に尽力、外来・通所リハビリテーションも充実しています。
オレンジプランとは?
認知症の高齢者数は急増しています。2002年には149万人でしたが、2012年には462万人で、約3倍になりました。予備軍とされる「軽度認知障害」の約400万人を加えれば、65歳以上の4人に1人が該当する計算です。
また、特別養護老人ホームへの入所を待つ人が全国で40万人を超えているという現状があります。
こうした背景を元に、厚生労働省はオレンジプラン(認知症施策推進5ヵ年計画)を打ち出しました。2013年度から2017年度までの5ヵ年計画であり、既にスタートしています。なお、この通称は、認知症のサポーター(認知症への理解を深め、認知症の人とその家族を支援するための養成講座を受講した人)が手首に着けるオレンジ色のリングに由来しているとのこと。
これまでの認知症ケアは、認知症の人が行動・心理症状等に「危機」が発生してからの「事後的な対応」が主眼でした。オレンジプランでは、「危機」の発生を防ぐ「早期・事前的な対応」を基本としています。このため、自ら相談されないが、認知症の疑いのある方を対象に、各市町村に「認知症初期集中支援チーム」を設置することを目指しています。
町田市の支援チームが始動
町田市の認知症事業のひとつである「認知症初期集中支援チーム」の活動が本格的に始まり、8月28日、第1回目となるチーム員会議が町田市役所の会議室にて行われました。
会議には、当院から精神科医師、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士が出席。また、鶴川地区の高齢者支援センター(包括支援センター)の介護支援専門員と、事務局として市の高齢者福祉課の担当者が出席しました。
町田市は、国のオレンジプランを踏まえ、「住み慣れた地域での生活継続の推進」を目標に掲げ、「統合的な認知症ケアの体制づくり」の構築を目指しています。その取り組みのひとつが「認知症初期集中支援チーム」であり、「認知症の早期診断と早期対応」の役割を担っています。
具体的には、高齢者支援センターが情報収集を行い、その情報を元に訪問支援対象者を選定し、医療機関のチーム員(医師や看護師など)と支援センターのチーム員(介護職)がペアで訪問。
その内容を元に支援方針を決定し、医療機関への受診や介護保険サービスの利用へと繋げていくという流れになっています。
町田市を4つの圏域に分け、圏域ごとに医療機関が参加していますが、当院が参加している鶴川圏域のチームは他の圏域に先駆けて活動をスタート。
そのため、まだまだ手探りの状況ですが、これまで以上に行政・包括と協力し当院の医療資源を提供していくことで「認知症でも安心して暮らせるまちづくり」に貢献していきたいと考えています(行政としてのこの事業への取り組みは、都内では世田谷区に次いで2ヵ所目)。
まずは福祉職支援チーム員のアセスメントが大切
精神科
富永 桂一朗 医師
チーム員会議には参加していますが、実は私は、まだ支援対象者さま宅を訪問していません。
実際の現場では、医師や看護師など医療機関の支援チーム員よりも、福祉職の支援チーム員の方が出番が早いということがわかりました。ほとんどの支援対象者さまとそのご家族は、「認知症」に対しての理解が足りていません。
医療・介護・制度、どれも理解が進んでいないので、まずは福祉職の支援チーム員のアセスメント(何を求めているのかを正しく知り、それが生活全般の中のどんな状況から生じているかを確認する、支援活動を行う前の評価)が大切だと思います。
ゴールのないマラソンにはインターバルが必要です
外来・通所
リハビリテーション師長 松本 美榮子 看護師
A子さんの相談は、ご家族の認知症についてでした。
認知症は家の恥だとして他の家族は、その方の認知症を認めず、介護保険も申請していない状況でした。
A子さんも他の家族に内緒にしたいとのことで、ご自宅ではなく別の場所で対応しました。介護の負担がA子さんひとりにかかる状況でした。
わたしも両親と義父の3人を介護した経験があります。認知症介護は24時間365日ゴールのないマラソンのようなもの。インターバルが必要なのは間違いありません。ぜひご相談ください。
“認知症”を不安に思うのは本人だけではない
臨床心理室主任
川合 嘉子 臨床心理士
あるケースでは、当院から臨床心理士の私と、松本看護師、早川精神保健福祉士の3名、高齢者支援センターの2名、計5名の支援チームで対応しました。
相談はご夫婦。ご夫婦一緒の時と個別に聞く場合では答えが異なりました。
お二人の関係性とプライドが影響しているのだと思います。認知症と判断されるのはご本人だけではなく、ご家族も不安に感じます。その後、このご夫婦は当院の見学に来られました。認知症は早期発見、早期対応が肝心です。
病院外の情報を得て、外(地域)と中(病院)の調整が可能に
医療相談室係長
早川 準 精神保健福祉士
普段は病院内にいるわけですから、自分から支援対象者さま宅を訪問するような職務に就くことなど考えてもいませんでした。
支援チームの一員となり、病院外の情報を得ることができるようになったことで、地域と病院の調整が可能になったと感じています。また、実際に認知症初期集中支援に携わってみて、まずは”認知症”そのものの理解と、介護や制度を理解してもらうことが重要だと思いました。自分たち精神保健福祉士の出番なのだと実感しています。
医療法人財団明理会
鶴川サナトリウム病院
〒195-0051 町田市真光寺町197
TEL.042-735-2222 http://www.tsurusana.com
もの忘れ・認知症 相談窓口(電話相談):TEL.0120-115-513
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