睡眠時無呼吸症候群に要注意! 板橋中央総合病院

交通事故を引き起こす居眠り運転の重大な原因として「睡眠時無呼吸症候群」が社会的にクローズアップされています。これは眠っている間に気き ど道う が塞ふさがってしまい、多い人では1時間に30回以上も呼吸が止まってしまう厄介な病気。満足な睡眠が摂れないため、激しい睡魔に襲われてしまうのです。

また、酸欠状態が毎晩繰り返されることから、心臓疾患や脳卒中など命にかかわる病気の誘因にもなっています。
板橋中央総合病院で呼吸器外科・睡眠時無呼吸症候群外来を担当する”睡眠のスペシャリスト”高橋保博先生に、その原因と治療法についてお話を伺いました。

 

心疾患や脳卒中の誘因となる睡眠時無呼吸症候群

「睡眠時無呼吸症候群外来」が開設されたと伺いました。
どんな病気なのでしょうか?

大きく分けて「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」と、「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」の2タイプがあります。
一般的に多いのはOSA。眠っている間に、鼻から肺への通り道である上気道が塞がり、10秒以上、断続的に息が止まってしまう病気です。

一晩に30回以上、あるいは1時間に5回以上この無呼吸があれば、OSAと診断されます。1時間に15回未満で軽症、15回以上30回未満なら中等症、30回以上あれば重症です。

 

それは苦しそうです。

ところが自覚のない方が多いのです。
パートナーにいびきが酷い、寝像が悪い、時々息をしていないなどと指摘されて来院されます。問診をすると、ほとんどの方が起きぬけに頭痛がする、倦怠感で仕事がはかどらない、昼間異常な眠気があり、深い居眠りに繰り返し襲われるなどの症状を訴えますね。乗り物を運転していれば、重大な事故を起こしかねません。

 

怖い病気なのですね。

睡眠は健康を維持する上で、大きな役割を担っています。
睡眠中は脳の自律神経のうち休息モードである「副交感神経」が優位になり、血圧、脈拍、体温、呼吸数などが下がって、脳と体を休ませているのです。

詳しく説明すると、睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、交互に訪れています。レム睡眠は全身の筋肉が緩む「体の休息タイム」。
脳はある程度活動しており、記憶の整理をしています。私たちが夢をみるのもこの時ですね。

一方ノンレム睡眠は「脳の休息タイム」。体内では成長ホルモンが分泌され、細胞の修復と新陳代謝が活発になります。「無呼吸」になる時間は、眠りが深い時間、すなわちノンレム睡眠時によく起こります。

 

無呼吸が頻繁に起こると、体も脳も疲労が回復しない。

睡眠の質が著しく低下した状態が続きます。血中の酸素濃度が下がるため、酸欠を補おうと活動モードの「交感神経」が優位になり、血圧や脈拍などが跳ね上がる。心臓と血管に、何十年もの間、恒常的に大きな負担がかかってしまうのです。

睡眠時無呼吸症候群の方は、健常者と比べて高血圧が1.4倍、夜間心臓突然死が2.6倍、脳卒中が3.3倍、糖尿病が4倍、うつ病が1.4倍、罹患リスクが高いといわれています。腎臓病の方も多い。全般に生命予後が悪いというデータもあります。
当外来の目的は、睡眠時無呼吸症候群を早期に発見・治療し、これら命にかかわる病気を予防・改善することです。

 

年齢を問わず発症。アゴの小さい方は要注意

OSAの原因は?

東洋人の場合は、骨格と体質の影響が大きいですね。アゴの骨が小さく後退していて、舌が厚く、もともと上気道が狭い方は、仰向けになると舌がノドに落ち込むため、呼吸が塞がれやすいのです。ですから小学生の患者さまもおられますし、痩せている方でも発症します。

さらに肥満となって首周りに贅肉がついたり、加齢で筋肉や組織の弾力が低下したりすると、発症率が高まるのです。

女性の方は閉経後の女性ホルモンの変化で、軟なんこうがい口蓋が柔らかくなって罹患する方が増えますね。また、扁へんとうせん桃腺が肥大していたり、アレルギー性鼻炎などで息の通りが悪ければ、並行して治療をするようおすすめします。
一般的には男性の患者さまの割合が高く、40~60歳では8人に1人といわれています。

 

調べる方法はあるのでしょうか?

病院から小型の検査機器を貸し出し、一晩睡眠中に装着していただきます。血中の酸素濃度、脈拍、胸部の運動、呼吸の状態などが記録されます。手軽で簡単ですよ。
さらに詳細なデータが必要な場合は、一泊入院して睡眠ポリグラフ検査を行い、このほかに脳波や心電図、眼電図、筋電図などをチェックします。

 

治療の基本は、空気を送り込むCPAP(シ ーパップ)

治療はどのように行うのでしょうか?

治療のゴールデンスタンダードは「CPAP(シ ーパップ)」=持続陽圧呼吸療法。睡眠中にマスクを装着し、本体から空気を持続的に送り込んで、上気道の閉塞を防ぐものです。健康保険が適応され、機器がレンタルされます。

 

毎晩つけて寝るのですか?

はい。一生装着する必要があります。現時点で、気道の形を根本的に治療することは困難ですから。1ヵ月に一度通院していただき、機器のSDカードに記録された呼吸のデータなどを一緒に見ながら、効果を確認します。多くの方が日常生活の質が格段にアップしたと実感されていますよ。

慣れるまでは鬱うっと陶う しいため、脱落する患者さまもいらっしゃいますが、健康管理と交通事故などの防止に、どれほど重要な治療なのか、カウンセリングをするのも我々の役目です。

 

もう一つの「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」とは?

脳にある「呼吸中枢」に異常が起こり、呼吸に関わる筋肉に指令が届かなくなって、断続的な無呼吸が起こる病気です。
これは脳・血管疾患、心疾患、腎臓病の既往のある患者さまに発症しやすいといわれています。

たとえば心不全なら76%の方に睡眠時無呼吸症候群が見られますが、多くの場合OSAとCSAが合併しているのです。

前出の検査機器で、病態を正確に把握することができます。呼吸中枢は血中の二酸化炭素の濃度に反応して指令を出すため、病気で血液循環に問題があると、呼吸の制御が不安定になるのだと考えられています。
OSAもCSAも脳・血管疾患や心疾患を悪化させる要因ですから、さらに悪循環に陥り、致死的な発作の発生率も高まってしまう。これらの病気のある方は、必ず睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてください。

 

これもCPAPで治療ができるのですか?

いえ。自発呼吸が止まるのですから、人工呼吸器であるBIPAP(バイパップ)(オートサーボ式人工呼吸療法)が必要です。呼吸のリズムで「フウッ・フウッ」と空気を強力に送り込みます。マスクも本体も、見た目はCPAPと変わりません。

 

睡眠の質を守ることは、命を守ることなのですね。

そうです。私たちには本来、地球のリズムに合わせた「体内時計」が備わっています。しかし、不規則でストレスの多い現代生活のために、それが乱れて、不眠症などの障害を起こしやすくなっています。
早寝早起きを心がけ、安眠できるよう、寝室は暗く静かな環境に整えましょう。
またアルコールは、寝つきは良くしますが、後半の眠りが浅くなり、睡眠全体では質が低下します。寝酒は控えた方が賢明ですよ。

はい。今夜から気をつけます。ありがとうございました。

 

医療法人社団明芳会
板橋中央総合病院
〒174-0051 東京都板橋区小豆沢2-12-7 
TEL.03-3967-1181 http://www.ims-itabashi.jp

◎記事内容に関するお問合せ:医療連携室 TEL.03-3967-4275

呼吸器外科
睡眠時無呼吸症候群外来(SAS外来) 
高橋 保博(たかはし やすひろ)医師

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