血液透析にもニューウエーブ 血液浄化療法で症状を改善 新松戸中央総合病院

体を巡る血液を浄化することで、さまざまな病気が快方に向かう。
新松戸中央総合病院の血液浄化センターでは、救急救命医療から難病の治療、血液透析に至るまで、各種の「血ア フェレシス液浄化療法」に力を入れています。
副院長の中村先生には先端技術を、血液浄化センター長の佐藤先生には、新しいタイプの血液透析「オンラインHDF」についてお話を伺いました。

 

発想の転換から生まれた血液浄化療法

中村先生

血液浄化療法(アフェレシス)とは、どんな治療ですか?

血液をいったん体の外に取り出し、そこで病気の原因物質や、症状を悪化させる物質を取り除いて、体内に戻す治療です。ターゲットの物質に応じて、さまざまな吸着装置や濾過装置を使い分け、血液をキレイに浄化します。アフェレシスはもともとギリシア語で「分離」を意味する言葉で、昔から行われている人工透析も、ある意味、アフェレシスの一種なんですよ。

救急救命医療として活躍する一方、閉塞性動脈硬化症や膠原病、潰瘍性大腸炎など難病の治療に効果をあげています。

 

救急救命医療というと?

感染症からくる敗血症性ショックや、多臓器不全を起こした患者さまに行う「エンドトキシン吸着療法」があります。エンドトキシンは細菌が作り出す毒性物質ですが、血液中に急激に増えると白血球が反
応し、大量の炎症性物質が発現します。二次的な毒素も発生するため、全身状態が一気に悪化するのです。

この療法では、エンドトキシンに加えて、悪性物質を複合的に浄化することができます。20年ほど前に日本で開発され、世界に広まりました。私も研究者として、当初から名前を連ねています。当院は、エンドトキシン吸着療法(保険適応)を年間約40~60症例施行し、約70%の救命率を誇っています。研究面でも日本を代表する施設として国内外から高い評価をいただいています。

 

難しい処置なのですか?

理論的にはごくシンプルです。脚の付け根か頸部 の静脈にカテーテルを挿入し、血液をポンプでボトル状の吸着カラムに送り込む。ここで浄化し、再びカテーテルで体内に戻すだけです。カラムの大きさは、天地60センチほど。もちろん、全身管理に細心の注意が必要なのは、いうまでもありません。

処置を開始すると短時間で血圧が安定し、呼吸困難が改善するなど、多くは劇的に回復します。所要時間は症状にもよりますが、当院では基本的には2時間、病態により6時間かけて、ゆっくり血液を循環させます。保険適応は2回ですが、重度の肺炎や急性腎不全などの臓器障害も治癒に向かいます。

 

さまざまな難治性疾患の福音「LDL吸着療法」

難病の治療には、どんなものがあるのでしょう。

まず「LDL吸着療法」ですね。血液を血漿と血球成分に分離し、血漿(けっしょう)から動脈硬化の元凶となるLDL=悪玉コレステロールを取り除きます。
手脚の末端の血管が詰まり、最悪の場合は患部が壊死する閉塞性動脈硬化症では、痛みで脚を引きずっていた人が、1回約3時間、10回ほどの治療で、スタスタ歩いて帰宅する方も大勢います。

腎臓の毛細血管がダメージを受け、腎機能が低下する難治性ネフローゼ症候群にも効果がある。現在、健康保険が適用される原因疾患は巣状糸球体(そうじょうしきゅうたい)硬化症だけですが、患者数の多い糖尿病腎症についても先進医療として申請中です。
人工透析への移行を防ぎ、心疾患や脳卒中の予防も期待できる。炎症を抑え、老廃物を除去するなど多面的な効用があります。

 

メタボリック症候群にもよさそうですね。

薬を投与しても、LDL値や中性脂肪値が下がらない重度の脂質異常症は、将来的に対象となるかもしれません。現在は保険適応のある家族性高コレステロール血症(先天的におこる高脂血症)の患者さまに行っています。

血液を循環させた吸着カラム排液には、脂分がベッタリ溜まる。まさに血液サラサラ(笑)

 

膠原病にも効果があるとか?

膠原病は自己免疫疾患の1つです。体内では免疫反応として、病原体などを攻撃する「抗体」が作られていますが、これが相手を間違えて、自分自身の組織を傷つけるために起こります。従って、有害な抗体を吸着することで、症状が緩和する。ステロイド薬や、免疫抑制剤がうまく効かない場合は、試みる価値があるでしょう。

 

そのほかの療法は?

当院で症例が多いのは、劇症肝炎などで毒素が増えた血漿を、新鮮凍結血漿と入れ替える「血漿交換療法」。また、出血性の下痢が続く潰瘍性大腸炎には、過剰な炎症反応を起こした顆粒球(かりゅうきゅう)(白血球の一種)を取る「顆粒球吸着療法」が適しています。

アフェレシスには研究中の療法もいろいろあり、大きな可能性を秘めたジャンルなんです。

ありがとうございました。

 

新しい透析「オンラインHDF」とは

佐藤先生

どんな場合に、透析療法が必要になるのでしょう。

腎臓のもっとも大切な役割は、血液から老廃物を濾過し、排出することです。この機能が失われると尿毒症を起こし、命にかかわる。原因となる疾患は、糖尿病腎症、慢性糸しきゅうたい球体腎炎などいろいろですが、腎臓の機能が、健康な人の15%未満に低下した状態が続くと慢性腎不全と診断され、5~6%に低下すると透析療法を検討します。

日本で行われている透析患者さまの97%は、血液を体外に取り出し、透析装置で老廃物を取り除く「血液透析(Hemodialysis:HD)」を受けています。

※ほかに腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)がある

 

それを補うのが「血液の濾過」ですね。

ヘモフィルターで血液を濾過すると、大きな分子の老廃物もうまくとれます。そこで「透析」と「濾過」を組み合わせたのが、HDF(HD Filtration)療法です。オフラインHDFとオンラインHDFがあり、オフラ
インHDFは瓶や補液バックに入った薬剤を補液として使用し、オンラインHDFは透析液をそのまま補液として使用するため、濾過するために足される補液量が多くなります。

そのためオンラインHDFの方がより多くの濾過をかけることができ、結果、より多くの老廃物を取り除くことができるのです。

 

オンラインHDFは、どこが新しいのですか?

徹底的に殺菌・浄化した透析液を、フィルターに大量に流し、血液の濾過をスムーズに行います。これで本来の腎臓に近い機能を実現できました。当院では昨年11月に導入し、約100名の患者さまのうち、8人からスタート。いずれ全員に広げたいと計画しています。

普通の透析では合併症として、β2マイクログロブリンという老廃物が骨や関節に蓄積し、痛みやしびれ、カユミを発症するアミロイド症に悩む人が多いのですが、オンラインHDFに替えて、かなり改善してきました。疲労感が残らない、夜はぐっすり眠れるといった声もきかれます。

 

朗報ですね。

ただ、どんなに装置が進化しても、ご本人の生活管理が疎おろそかだと、意味がありません。体重を増やさない、水分や塩分を摂り過ぎない、食事療法を守ることです。老廃物や水分の溜まり方が早いと、心臓に大きな負担をかけますし、尿毒症悪化の心配もでてきます。
血液透析のために、1回4~5時間、週3回、病院に通い続けること自体、大変なこと。生活の質が維持できるように、精神面をフォローすることも、私たち医師やコメディカルの大切な役割です。

 

まさに二人三脚。

はい。透析に至らないための、腎臓病の早期発見・早期治療にも力を入れています。気になる方はぜひ検査を受けましょう。

ありがとうございました。

 

医療法人財団明理会
新松戸中央総合病院

〒270-0034 千葉県松戸市新松戸1-380 
TEL.047-345-1111 http://www.ims.gr.jp/shinmatsudo/

◎記事内容に関するお問合せ:地域連携室 TEL.047-309-4186

日本腎臓学会 評議員・専門認定医・指導医
日本内科学会 認定内科医  
日本急性血液浄化学会 評議員・認定指導者
日本アフェレシス学会 評議員・血漿交換療法専門医
日本結合組織学会 評議員
慢性腎臓病対策協議会 千葉県代表

新松戸中央総合病院
副院長・内科(主任)部長 
中村 司(なかむら つかさ) 医師

日本内科学会 総合内科専門医 
日本腎臓学会 腎臓専門医
日本透析医学会 透析専門医・指導医 
日本泌尿器学会 泌尿器科専門医
日本急性血液浄化学会 評議員・認定指導者
日本アフェレシス学会 評議員・血漿交換療法専門医
日本医師会 認定産業医・認定健康スポーツ医

新松戸中央総合病院
血液浄化センター長・腎臓内科部長
佐藤 英一(さとう えいいち) 医師

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